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危機の中で築く:パンデミック下のサラワクにおける大型建設プロジェクト遂行の記録

ボルネオ島北部に広がるサラワク州。豊かな熱帯雨林、多様な文化遺産、そして落ち着いた街並みが特徴の地ですが、その美しさの裏には、物流・人材の確保といった建設プロジェクトを進めるうえでは不可避の当地特有の課題がありました。
サラワクはマレー半島から南シナ海を挟んで隔てており、建設資材や機材、人員の調達には高度な計画性が求められます。

当社が2021年半ばに受注した総事業費7億リンギット規模のプロジェクトも例外ではなく、厳しい仕事になることを覚悟しました。さらにそのプロジェクトは、近代史上かつてない社会的混乱、世界的なCOVID-19(コロナ)パンデミックの真っただ中に始まったのです。そのため私たちは、予想をはるかに超える困難の中で、この仕事をしなければなりませんでした。
マレーシア全土では2020年から2022年にかけて複数回のロックダウン(MCOMovement Control Order)が実施されました。その中でもサラワク州では国家回復計画(NRPNational Recovery Planの進捗が特に遅れ、20224月まで厳しい行動制限下にあったのです。

こうした制約の中で、私たちは「安全」「品質」「工期」のすべてで妥協せず、最終的には無事にお客様へ建物をお引き渡しすることができました。
本稿では、その挑戦と取り組みの軌跡を振り返ります。

 


前例のない困難 ― サラワクで直面した六つの課題

  1. ロックダウンによる作業制限
    2021
    6以降、マレーシアでは全面的な建設制限が実施され、当プロジェクトも「不要不急工事」に分類。工区や作業時間が大幅に制約されました。
  2. 急変する感染状況と新たなSOP対応
    新たな標準作業手順(SOPStandard Operating Procedure)の適用、人員の交代制運用、追加検査と消毒対応などにより、当初の計画は大きな再調整を迫られました。
  3. 資材調達の混乱
    サラワクでは多くの重要資材をマレー半島から輸送する必要があります。世界的なサプライチェーンの停滞により、船便の遅延、品薄、急激な価格変動が続発しました。
  4. 機材確保の難航
    ロックダウン解除直後、建設業界全体で重機・プラント設備の需要が急増。適切な機材を確保するための競争が激化しました。
  5. 労働力の制約
    外国人労働者の在留許可切れや入国規制により、熟練者の確保が困難に。現場は常に限られた人員での作業を余儀なくされました。
  6. 感染防止対策の徹底による生産性の低下
    健康チェックや隔離対応、作業間隔の確保など、安全確保のための措置は不可欠である一方、日々の生産性に直接影響を与えるものでした。   

危機を乗り越えるための7つの施策

私たちは、この非常事態下でも高い品質と安全性を維持しながら、プロジェクトを前進させるため、社内外で総力を挙げました。

  1. 綿密な計画とミクロレベルのスケジューリング
    作業を細分化したタイムスケジュールを作成し、時間短縮や同時進行が可能な工程を徹底的に分析。状況変化に即応できる柔軟な計画体制を整えました。
  2. 現場の監視・調整体制の強化
    各チームに責任者を明確に配置し、進捗確認と意思決定を迅速化。現場間のコミュニケーションを密にし、トラブル発生時も即座に対応できる体制を構築しました。
  3. 組織内外の円滑なコミュニケーション
    オンライン会議や共有ツールを活用し、本社・現場・発注者・行政との連携を強化。共通理解と協働体制を維持しました。
  4. 本社のデジタル支援体制
    遠隔モニタリングや定期的なリモート会議を通じて、本社から現場を継続的にサポート。専門部署が課題解決に即応する仕組みを整えました。
  5. 衛生・安全文化の徹底
    SOP
    の厳守に加え、衛生対策を徹底。感染防止のみならず、従業員の健康意識の向上にもつなげました。
  6. エンジニアリングによる工法革新
    • 資材不足に対応するため、複数の杭工法を柔軟に採用
    • 現場打ちからプレキャスト・ポストテンション工法への転換により工期短縮と省人化を実現
    • 設備(M&E)工事を一部前倒しし、効率的な順序立てで工程を最適化
  7. 発注者・行政とのパートナーシップ
    労働力確保に向け、発注者・行政と定期的な協議を実施。制度的支援や外国人労働者の段階的復帰を実現しました。

 

成果 ― 不可能を可能にしたチームワーク

度重なる制約と混乱の中でも、当プロジェクトは工期内での完工高品質な仕上がり、そして重大災害ゼロを達成しました。
この成果は、現場スタッフをはじめ、関係機関・協力会社・本社支援チームが一体となって困難に挑んだ結果といえます。


 

結びに

COVID-19は、人・物・情報が密接に関わる建設業にとって、過去に例を見ない試練でした。
このような厳しい環境下で大型プロヘクトを完遂できたことは、創意工夫・規律・そしてチームワークの賜物です。現場と店内のスタッフが一丸となり、組織としての強靭さを高める貴重な経験を得ることができました。わたしたちは最終的な成果だけでなく、その歩みの一つ一つを誇りに思います。そしてこの経験が私たちをより強くし、あらゆる困難に対して、より確かな自信と柔軟さ、そして備えをもって立ち向かう力を与えてくれたと確信しています。