日本企業向け契約モデル比較:マレーシアでの建設契約の選び方
はじめに
豊かな資源や発達したインフラ、そして活発な経済活動を背景に、マレーシアは多くの外国投資家、とくに日本企業にとって魅力的な投資先となっています。
工場・倉庫・オフィス・商業施設などの建設にあたっては、土地条件や立地、インフラ整備状況、自治体の規制、技術的サポート、デューデリジェンス(実現可能性調査)、フィージブルスタディ、予算編成、バリューエンジニアリング、調達や人員計画など、検討すべき項目が多岐にわたります。当然ながら、建設に関わる制度や商習慣、文化的背景、技術的アプローチが国によって日本と大きく異なることも少なくありません。
そのため、海外投資家はプロジェクトマネジメントコンサルタント(PMC)や設計施工(D&B)業者の支援を求めることが多く、特に日系企業は日本の品質基準や働き方を理解する日系ゼネコンを選ぶ傾向があります。
当社は1971年よりマレーシアに拠点を置く日系総合建設会社です。日本のお客様の要望とマレーシア特有の現地事情の双方を踏まえたプロジェクト運営を可能にする、ワンストップ建設マネジメントサービスを提供しています。特に、外国投資家に有利な選択肢として「コンストラクションマネジメント(CM)契約」をご提案しています。
建設契約の主な形態:設計施工(D&B)契約、建設コンサルタント(PMC)契約、建設管理(CM)契約の違い
建設プロジェクトにおける代表的な3つの契約形態をご紹介いたします。
それぞれの特徴を把握し、プロジェクトの目的やリスク分担の考えに合った最適な選択をすることが重要です。


1. 設計施工(D&B:Design & Build)契約
D&B契約では、クライアントは一社の元請業者(メインコントラクター)と契約し、設計から施工までを一括して元請業者に委託します。元請業者が管理する主な業務は以下の通りです。
- 実施設計の作成・管理
- 設計・技術コンサルタントの選定・統括
- 行政機関への申請・承認手続きの代行
- 下請業者による工事の実施管理
- 現場管理およびプロジェクトの引き渡し
場合によっては、初期段階でプロジェクト管理コンサルタント(PMC)を起用し、概略設計や開発申請、入札資料作成などを進めた後、元請業者に引き継ぐケースもあります。
2. 建設コンサルタント(PMC)契約
PMC契約では、建設コンサルタントがプロジェクトの企画段階から完了まで、クライアントの代理人として全体を管理・監督します。主な役割は以下の通りです。
・設計の進捗管理
・行政申請手続きの支援
・品質・適法性・工事進捗の監督
・完了検査(Certificate of Completion & Compliance:CCCなど)の取得サポート
この契約形態では、メインコントラクターは純粋な工事実施に専念し、コンサルタントがクライアントの立場でプロジェクト全体を第三者的立場で監督・管理します。
3. コンストラクションマネジメント(CM)契約
CM契約は、建設の専門家であるCM業者が初期段階からプロジェクト全体に参画し、企画・設計・施工の各フェーズにおいてクライアントと密接に協働する仕組みです。
これにより、従来の契約モデルでは難しかった、より柔軟で透明性の高いプロジェクト推進が可能になります。CM契約がもたらす主な利点は以下の通りです。
- 企画・設計段階からの技術的助言: デューデリジェンスやフィージブルスタディを含む実現可能性・コスト・工法を多角的に検討。
- 早期の技術的インプット: 設計段階から建設の専門家が関与することで、問題の早期発見と解決、コスト最適化を実現。
- 透明性の高い概算予算とコスト管理: 開発段階から費用を明確にし、透明性の高いコスト管理を実現します。
- クライアントの主導のプロジェクト運営: 一括入札ではなく、工種別の個別パッケージ入札により、クライアントが発注・コスト決定の主導権を握ることができます。
CM契約は通常、次の3段階で進行します。
ステージ1:プレコンストラクション(企画・準備段階)
CM業者はクライアントと協働し、プロジェクトの基盤を確立します。
主な業務は以下の通りです。
- 実現可能性調査(デューデリジェンス)およびフィージブルスタディの実施
- 概略設計の支援と最適化
- 概算予算の提示
- プロジェクトの仕様・要件の明確化
クライアントが提示された概算予算を承認すると、CM契約が正式に締結され、詳細設計および行政申請の手続きが開始されます。設計の進捗に合わせて概算を精緻化し、最終的に「最大保証金額(Guaranteed Maximum Price:GMP)」を設定することが可能です。これにより、クライアントは以下の大きなメリットを得られます。
- コスト超過リスクの大幅低減: 総費用がGMPを超過しないことを、CM業者が保証するため、クライアントの財務リスクを大幅に低減できます。
- コスト削減インセンティブ: 実際の費用がGMPを下回った場合、その節約分(CMフィー)をクライアントとCM業者で按分する契約も可能であり、コスト削減へのモチベーションを高めます。
この方式は「CM at Risk + GMP」と呼ばれ、プロジェクト費用の確実性と安心感を最大化します。
ステージ2:詳細設計・入札準備段階
詳細設計の確定と並行して、工事着工に向けた準備が行われます。
主なプロセスは以下の通りです。
- 厳格な基準に基づいた下請業者の事前資格審査(Pre-qualification)
- 工種(パッケージ)ごとの透明性の高い入札・評価プロセス
- 最適な業者への施工パッケージの発注
- 財務管理および詳細なコスト報告
CM契約の最も重要な特徴の一つは、その費用構造の圧倒的な透明性です。
- クライアントは各工種にかかる実際の費用を詳細に把握できます。
- パッケージ発注前には、複数の見積もりを比較提示し、最適な選択をサポートします。
- プロジェクトの財務状況は逐次、詳細に報告されます。
工種別にパッケージを分割することで、管理と調整を効率化し、プロジェクト全体の最適化を図ります。
ステージ3:施工管理(建設フェーズ)
建設段階に入ると、CM業者は以下の包括的なマネジメントを行い、品質・コストスケジュールの最適化を図りながらプロジェクトを円滑に進めます。
- 経験豊富なチームによる包括的なプロジェクトマネジメント体制の構築
- 専門的な技術支援と厳格な管理
- 詳細な工程管理、効率的なスケジューリング、関係者間の円滑な調整
- 国際基準に基づいた品質保証(QA)および品質管理(QC)
- 予算内でのコスト管理と、計画通りの工期厳守
CM業者は、関連法規に基づく必要な検査を通過させ、最終的な完了証明書(Certificate of Completion & Compliance:CCC)やその他全ての承認取得まで、責任を持って対応いたします。
まとめ
マレーシアへの事業展開を検討されている外国投資家、特に日本企業の皆様にとって、コンストラクションマネジメント(CM)契約は、柔軟性、透明性、そして効率性により、建設プロジェクトの開発プロセスを大幅に簡素化し、成功へと導く有効なモデルとなります。マレーシア国内ではまだ従来の契約方式が主流ですが、コストの透明性とプロジェクトのコントロールを重視する先進的な投資家の皆様にとっては、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
当社は、長年の経験と実績を基に、このCM契約のメリットを最大限に引き出し、お客様の事業成功に貢献いたします。
当社について
私たち佐藤工業は、1971年のマレーシア進出以来、当地で事業を展開する日系総合建設会社です。マレーシア建設産業開発委員会(CIDB Malaysia)の最高位であるG7建設業許可を保有し、ISO 9001:2015の認証も取得しております。長年の経験と国際的な品質基準に基づき、法令を遵守し、常に高品質な建設サービスをグローバルな投資家の皆様にご提供いたします。
マレーシアでの建設プロジェクトに関するご相談は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。