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E-Invoice for Construction Companies in Malaysia: A Practical Guide (2026)

マレーシアの電子インボイス(e-Invoice)制度:建設業における実務ガイド(2026年版)

マレーシアでは、内国歳入庁(IRBM/LHDN)の主導により、電子インボイス(e-Invoice)制度の導入が進んでいます。建設業は、複数の関係者、重層的な契約構造、頻繁な請求サイクルといった特性から、他業種に比べてe-Invoice制度の影響を特に受けやすい業種です。本ガイドでは、マレーシアで建設プロジェクトを行う企業、特に日系企業の実務担当者に向けて、建設業における電子インボイス対応の要点を解説します。


ご注意:マレーシアのe-Invoice制度は、日本の適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)とは異なり、消費税に関連する制度ではありません。マレーシアにおけるすべての商取引の記録をデジタル化し、税務当局にリアルタイムで報告するための制度です。

要点まとめ:

  • 建設請負業者(Contractor):出来高請求(Progress Claim)ごとに個別のe-Invoiceを発行する必要があります。一括請求(Consolidated e-Invoice)は禁止されています。
  • 建設資材販売業者:2026年1月より、卸売・小売業者は一括請求(Consolidated e-Invoice)が可能になりました。ただし、1取引あたりRM10,000を超える場合、または買い手が個別発行を求めた場合は個別発行が必要です。
  • 税務リスク:下請業者がe-Invoiceの発行義務を怠った場合、元請業者の経費が税務上の損金として認められない可能性があります。

一括請求(Consolidated e-Invoice)の可否:建設業が知っておくべきこと

建設業は基本的に「一括請求が認められない業種」に分類されますが、事業活動の内容によってルールが異なります。IRBMが2026年1月に公表したe-Invoice Specific Guideline Version 4.6に基づく最新のルールは以下のとおりです。

1. 建設請負業者(Construction Contracts)

所得税法(建設契約)規則2007年(Income Tax (Construction Contracts) Regulations 2007)に基づく建設請負業者は、一括請求が厳格に禁止されています。

  • 個別提出が必須:すべての出来高請求書および請求書をMyInvoisシステムに個別に提出する必要があります。
  • 実務への影響:下請業者の請求やサプライヤーからの請求を正確に追跡し、すべての書類がリアルタイムで認証されるよう管理する必要があります。

2. 建設資材販売業者(卸売・小売)

2026年1月より、IRBMは建設資材の販売に特化した事業者に対する制限を緩和しました。

  • 一括請求が可能に:月末にまとめてConsolidated e-Invoiceを発行することが認められています。
  • 例外:以下の場合は個別のe-Invoice発行が必要です。(i)1取引の金額がRM10,000を超える場合、(ii)買い手が税務控除のために個別のe-Invoiceを要求した場合。

出来高請求(Progress Claim)とe-Invoiceの対応

建設業では出来高請求が主な請求方法ですが、e-Invoice制度の導入により、請求の流れをIRBMの要件に合わせる必要があります。

認証された出来高請求は個別の取引として扱い、認証額に基づいてe-Invoiceを発行します。認証(Certification)、請求(Billing)、IRBMへの提出の間に整合性を確保し、タイミングのずれによる差異が生じないよう注意が必要です。

変更指示(Variation Order)については、追加工事には新たな請求(および対応するe-Invoice)が必要です。減額や削除がある場合は、Credit Note(クレジットノート)を通じて適切に調整します。


下請業者のe-Invoice対応と元請のリスク

下請業者には、自社の売上高に基づくe-Invoice発行義務があります。これは元請業者にとって新たな実務上の課題となります。各下請業者がe-Invoiceの発行義務を負っているかどうかを確認する必要があるためです。

e-Invoiceの発行義務がある下請業者がこれを怠った場合、元請業者にも影響が及びます。具体的には、適切なe-Invoiceの裏付けがないことにより、発生した費用が税務上の損金として認められない可能性があります。

日系企業への注意点:マレーシアで工場建設や施設整備を行う日系企業は、現地の下請業者を多数使用するケースが一般的です。下請業者のe-Invoice対応状況を契約前に確認し、必要に応じて契約書にe-Invoice発行義務を明記することをお勧めします。


建設資材サプライヤーの税務控除リスク

建設資材サプライヤーの中には、事業区分によって一括請求(Consolidated e-Invoice)の発行が認められる場合があります。

これは建設会社にとってリスクとなります。

サプライヤーがe-Invoiceの発行対象外であると誤って判断したり、e-Invoiceの発行を依頼し忘れた場合、証憑書類が税務上の基準を満たさず、発生した費用が税務上の損金として認められない可能性があります。

サプライヤーの対象区分について思い込みで判断せず、必要なe-Invoiceを確実に取得することが重要です。


政府機関への支払い

建設業では、地方自治体や政府機関との取引が頻繁にありますが、これらの機関はe-Invoiceを発行しません。この場合、各機関が発行する公式の領収書を証憑書類として使用することが認められています。


立替金と経費精算(Reimbursement vs Disbursement)の取り扱い

建設業において重要なのが、設計事務所、エンジニア、積算士などのコンサルタントに関連する費用の取り扱いです。

これらのコンサルタントが会社に代わって許認可手数料、交通費、その他の事務費用を立て替えるケースは一般的です。これらの費用の取り扱いは、「Reimbursement(経費精算)」と「Disbursement(立替払い)」のどちらに分類されるかによって異なります。

費用がコンサルタントのサービスの一部を構成する場合は、一般的に「Reimbursement」として扱われ、コンサルタントが請求時にe-Invoiceを発行する必要があります。コンサルタントが単に支払代行者として行動している場合は、「Disbursement」として扱われ、異なる書類処理が適用されます。

この取り扱いを事前に明確に定義し、合意しておくことが重要です。分類を誤ると、e-Invoiceの処理ミスや税務上の問題につながる可能性があります。


複数法人が関与するプロジェクトでの注意点

同一プロジェクトに同一グループ内の複数法人が参画するケースがあります。例えば、2つの別法人が同一サイトで異なるスコープの工事を行う場合です。

この場合、サプライヤーや下請業者から受領するe-Invoiceが正しい法人宛に発行されているか確認する必要があります。宛先の誤りは、原価記録の不一致、税務処理の誤り、監査時の立証困難につながります。現場レベルでは見落とされやすい実務上の問題です。


まとめ

電子インボイス(e-Invoice)制度の導入は、一括請求の制限、下請業者への依存、プロジェクトベースの取引構造といった特性から、建設業にとって特に大きな影響をもたらします。

下請業者のコンプライアンス、サプライヤーの証憑管理、立替金・経費精算の取り扱い、複数法人間の調整など、主要なリスク領域を慎重に管理することが求められます。

社内プロセスを見直し、関係者全員がe-Invoice制度の実務上の影響を理解することが、混乱を最小限に抑え、税務リスクを回避するための鍵となります。


参考資料


本記事は、佐藤工業(マレーシア)Sdn Bhdが作成しました。1971年の設立以来、マレーシアにおいて建設事業を展開し、CIDB Malaysia G7ライセンスおよびISO 9001:2015認証を取得しています。世界各国の投資家に向けて、マレーシアでの建設ソリューションを提供しています。